ビジネス

2021年9月14日 (火)

セルフレジの普及についてつらつら考える

Selfregistration

https://blog.goo.ne.jp/kanbow/e/76adf4b6e4b8fe647a188151b8a24aa0 より

 

元々日本は自販機天国だ。1970年代から自販機と店舗販売との間には明確な線引きがあったのだが、これが徐々に崩れてきて、現在は雪崩を打って自販機文化の核心である無人の装置に金を払うスタイルが浸透しつつあるということだろう。
最初にこの流れが起こったのは飲食店、特に麺類や定食をメインにしているお店で、入口で食券を購入するスタイルだ。これは人件費抑制という面もあるが、小規模店舗でクソ忙しい中で回転率を上げないといけない、しかも食の安全も担保する必要がある。そうなると、店員はできるだけ調理と配膳に集中して、会計には参加しないということが合理的な帰結となる。
次にこのスタイルが持ち込まれたのはガソリン給油だ。今やガソリンの給油はセルフがほとんどになった。ガソリンのように商品の質で差別化できない商品は単純に価格競争になってしまうので、人件費が徹底してコスト圧要因となる。結果として、会計も給油も全部セルフにしてしまい、できるだけ消費者に安く提供できるようにするしかない。こういう爆発物を客に直接扱わせることについて、安全第一のお役所はそう簡単に認めないだろうと思っていたが、あっさり普及した。おかげで日本全国どこに行ってもガソリンの価格差が少なく、安心して給油できる状態になった。ただし、スタンドの数は半減して、田舎の国道を走っているとスタンドが全然ないので心配になることがある。
そして、対面会計の牙城であったスーパーなどの小売店で、ついにこのセルフ精算文化が入り込んで来た。理由は、会計処理から、面倒な現金やカードの受け渡しを分離して自動化することで、コスト削減をするためだ。これも人件費抑制が背景にあると言える。そこには非常に殺伐とした風景があるのだが、これが浸透した直後に新型コロナウイルスのパンデミックが発生。スーパーは巣ごもり生活の中でどうしても外せない場所であり、ここでの感染拡大が懸念された。しかし、結果的にスーパーなどでの感染拡大はみられていない。特に店員の感染が少なかった理由として、このセルフ会計の普及が貢献した可能性は十分にある。現金ほど人の手でこねくり回されるものはないかだら。
ただ、支払いのみのセルフレジは支障ないのだが、商品も自らバーコードを通して会計する方法は非常に問題だ。とにかく停滞する。また、バーコードの読み取りトラブルが多いし、酒類は同じくエラーのようなメッセージで一時停止する。客自身に商品をスキャンさせるということで万引きのリスクが高く、客が不自然な動きをするだけでもエラーが出る。店員が通すレジとは、トラブルの発生頻度が桁違いなのである。非常にフラストレーションがたまる。だから、慶はできるだけ店員がスキャンするレーンを選ぶようにしている。
セルフレジもクリップや他の異物を誤って入れてしまうとすぐエラーとなる。現金精算ほど時間と労力をとるものはないのだから、基本はキャッシュレス化だろう。クレジットカードは事業者の手数料負担が大きいので、交通系カードのような気楽さでチャージや支払いができる方向に行けばいいのかなと感じる。

 

2021年2月 4日 (木)

ワクチンダービーの火蓋切られる

Sputnikv

新型コロナウイルスの対策の切り札となるワクチン。12月からアメリカやイギリスを対象に接種が始まっている。日本は外国での接種状況を横目で見つつ、国内治験が出るまで動かないという、石橋を叩いてから渡る方式をとっているので、諸外国に比較すると出遅れている。もちろん、接種を急いでいるイギリスやアメリカは日本どころではない感染者と死者数を出しているし、開発国であるので、日本が出遅れるのは仕方ないと言える。

ただ、データが欲しい製薬業界はアメリカやイスラエルなど特定の国を中心に供給するなど出し渋りと見られる動きが見られている。いわゆる「買い負け」に近いことが起こっている可能性もあり、これが日本国内での接種スケジュールのめどが立たない理由の一つになっているのだが、ここに新しい参入者が出てきた。

英医学誌ランセットは2月2日、ロシアで開発された新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」について臨床試験(治験)の最終段階で91.6%の効果が確認されたとする論文を発表した。論文では20年9~11月に治験に参加した約2万人についてワクチン投与後の発症数などを調べた。ワクチンが原因とみられる重大な副作用は報告されず、60歳以上でも有効性は変わらなかった。発症した場合も重症化はしなかったという。権威ある医学誌でお墨付きが得られた訳だ。スプートニクVはロシアが2020年8月に承認し、世界初のコロナワクチンだと主張したいわくつきのものだ。治験の完了を待たずに承認して接種を始めたため、安全性が懸念されていた。
こうなると、ロシアはワクチンの安全性や有効性を強調し、外国への供給拡大を目指すワクチン外交を展開するだろう。この突然のプレーヤーの登場に、ファイザーやアストラゼネカなどの米欧系製薬会社は動揺しているに違いない。出せば出すほど売れる状況だったので、生産が追いついて居なったが、この隙間をスプートニクVに先食いされたら得られるはずの利益が飛んでしまう。そうなると、出し渋りの状態を解消すべく一気に供給を加速させるのではないだろうか。
日本でスプートニクVが導入される可能性は低いが、予定していたファイザーやアストラゼネカのワクチンの供給が加速するなら援軍となるだろう。やはり医薬品の業界も競争原理が働かないといけないということだ。

2020年7月 2日 (木)

すごいぞ「まいばすけっと」

東京出張で苦労するのが食材調達だ。国際都市の東京、飲食店は星の数ほどあり、別に食材を調達するために徘徊する必要はないのだが、やはり移動の疲れを考えると、さっさとホテルに入ってコンビニでビールと弁当でも食べてグビ・バタンした方が楽と言えば楽だ。何より金を使わない。しかし、コンビニはセブン、ローソン、ファミマのいずれも、日本中どこへ行っても同じモノが同じ値段で売ってあり、正直食傷気味だ。できればスーパーに入って、部屋で一人晩酌できる程度の総菜でも買い込むのがいい感じだ。特に揚げ物ではなく、野菜多め、焼きあるいは煮物を中心した総菜は有り難い。しかし、東京都内というコンクリートジャングルには、スーパーなるものはホテルの近くにまずない。特にホテルは駅に隣接していることが多く、ビジネス街と重なり、昼間でさえランチ難民が多い場所だ。

しかし、ここ10年ばかり、東京の町中にもスーパーのような小規模店舗が増えている。その代表格として、イオンが運営する「まいばすけっと」がある。いかにもイオンらしいネーミングの店だが、これが侮れない。店舗の大きさは広めのコンビニぐらいであるが、商品の品揃えは完全にスーパーだ。コンビニには置いてない生野菜や肉などの生鮮食料品がちゃんと置いてある。冷凍食品も品揃えが豊富だ。酒だってしっかり品揃えがある。総菜や弁当もある。あれこれ買い込んでホテルで一杯やろうとする、しがない薄給サラリーマンにとって、まいばすけっとは救世主なのである。ちょっと駅から歩けば見つけることができる。

しかも驚くべきことに、まいばすけっとはローコスト・ハイパフォーマンスだ。同じイオン系列で同じ商品なのに、まいばすけっとの方が安いという商品がゴロゴロある。土地が高い都内に店を構えているスーパーが、郊外のイオン、あるいは地方のスーパーよりも安い価格で売ってあるというのは一体どういうことなのか?そういう疑問はさっさと忘れて、出張時はまいばすけっとに通うしかない。

慶が最も驚くのは刺身だ。こういう小規模な店舗で深夜までの営業が多いので、刺身のような日持ちがしないものはできるだけ最小限にしておかねばならない。コンビニなどは最初から諦めて、魚介類は練り物かタコのぶつ切りぐらいしかない。仮に取り扱うとしても、できるだけ売り切れるように、万人が受けいれる魚でないとダメだ。ということで、まいばすけっとにはマグロとサーモンの刺身にイカやタコぐらいしかない。だいたい一人分を小さいパックに入れて売られているのだが、価格が298円+税とか格安である。使用しているマグロは本マグロではなく、いわゆる庶民がたしなむ「ビンチョウマグロ」「キハダマグロ」である。これが、地方で売られているものよりも上等品が使われている。すなわち、新鮮でうまいのだ。

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さらにサーモンはノルウェー産のものもあるし(これは398円+税)、チリ産のものをショートニングでたたいた「サーモンタタキ」もあって、これがまた病的に旨い。ビールとワイン、マグロかサーモンの刺身、小さい弁当でも買えば、1000円あまりで晩酌できるのである。鶏肉料理ばかりの居酒屋など行く必要がない。
カップラーメンとかも安いし、ドリンク類も豊富で安い。そうなると、もうコンビニに用がなくなる。慶が神田のまいばすけっとに昼頃入った時は、安い弁当とドリンクを買うため、薄給サラリーマンがレジに長蛇の列をなしていた。これをみて、アベノミクスは完全に失敗してデフレ予備群が膨らんでいることを実感したのである。

 

2020年1月 5日 (日)

果たして「逃げるが勝ち」になるのか

Gorncarol

年末に突然飛び込んできたカルロス ゴーンの高飛びニュース。とにかく世間は正月休みで全てが止まっており、情報は海外のメディアからネット経由で流れてくるものばかり。日本の方からは未だにほとんど情報発信がないのだが、見事に高飛びに成功したのは事実のようだ。行き先は中東のレバノン。再婚相手のキャロル夫人はレバノン人、前々からフランス大統領やアメリカ大統領に対して、日本の検察に圧力をかけるように盛んに動いていた例の胡散臭い嫁だ。事実関係がまだ詳になっていないものの、この嫁がレバノン政府に働きかけて国外逃亡を手助けした可能性が濃厚だ。日本側はこれから状況証拠を全て積み上げて、国外逃亡を謀った実行犯を特定して、あらゆる外交手段を駆使してレバノン政府へ圧力をかけることになろう。
結論として、ゴーンを取り返すことは難しそうだ。脱兎のごとく高飛びされた場合、相手国の全面的な協力なしでは身柄を取り返すことはできない。レバノンのように政体も不安定で事実上まともな国交もない国ではお話にならない。主犯の嫁はレバノン人だし、ゴーン容疑者もレバノンでは大物経営者まで上り詰めたということでヒーローらしいので、のらりくらりごまかされておしまいだろう。

それにしても、容疑者が易々と高飛びできるというのは日本の司法制度の恥を晒すという意味で、かなりの大失態である。もちろん、検察は裁判がはじまるまで、ずっと身柄を国内の拘置所に拘束しておく頭であった。しかし、キャロル夫人が海外のメディアに対して日本の司法制度を悪く喧伝してコレがメディアを駆け巡ってしまったことで裁判所が外圧に折れて易々と保釈して自由の身にしてしまった。もちろん、そうした外圧をうまく利用した辣腕弁護士の交渉術も大きかった。

一方で、レバノン政府は、これまで余り外交関係が無かった日本がこの件に関してどのように反応して来るのか、全くシミュレーションしていないのではないだろうか?日本としては、レバノンのような政体が不安定な小国と関係悪化しても何も失うものはないから、徹底して圧力をかけ続ければ良い。だいたい殺人犯でもテロ実行犯でもない経済疑獄の当該容疑者であり、実質的な被害者は日産自動車内部にとどまる。所詮民事事件の大いなるものである。日本国民の関心はあれど、国民レベルでは「どうでも良い」案件である。大昔に青森の住宅公社の職員がチリ人ホステスのアニータに14億円も貢いだ事件があったが、アレと同じで、外国に逃げられたり資産を移されたら、どうせ何も戻ってこないと思っている。既に除夜の鐘(ゴーン)が107回しかなく、1回はレバノンに逃げたとネット落語が流布している程度の話だ。日本の司法側は大恥を晒したが、保釈金15億円は没収してあるし、仮にレバノン政府がこの先ずっとかくまっても、ゴーンと共謀者のキャロル夫人はレバノン国内に軟禁状態で一生を暮らすしかない。国外の資産も日本の要請を受けた各国の判断で全て凍結されるだろう。レバノン国内に軟禁状態で兵糧攻めになるので、どっちにしても不自由な生活を強いられる。

それにしても、一番の被害者は弘中弁護士をはじめとした強力弁護団かもしれない。不利な被告を全力でサポートして逆転勝訴を請け負うプロ中のプロなのに、クライアントに何の相談も受けずにとっとと逃げられ、裁判所の評価も地に落ちたのだから、これほど人間不信になる立場はないのではないか。

いずれにしても、「熱ものに懲りてなますをふく」日本人の性格からして、今後20年ぐらいはフランス系の外国人経営者は日本企業から完全排除され続けるに違いない。日産とルノーの提携関係も事実上「仮面夫婦」状態で、進展することはなかろう。

 

2019年11月 1日 (金)

中古市場を侮ってはいけない

 

中古市場と言うと、最初に思い浮かぶのはメルカリなどネットバザールのようなものだろうが、ああいう雑貨ものは市場全体の一部である。基本は住宅、自動車、家電などである。慶も自動車とパソコンは中古を使っている。

中古というと他人が使ったもの、汚い、壊れており、そういう心配をするぐらいなら新品を買った方がよいというのが新品主義である。現代日本人は潔癖主義で、この新品主義が強い。しかし、アメリカやオーストラリアなどへ行けば、そこらじゅう中古車だらけで、むしろ新車の方が少ない。特にニュージーランドなどは、日本の20年ぐらい前の中古車で埋め尽くされていると言っても過言でない。なぜに中古車が人気かと言えば、安くて走れるからだ。そう、自動車というのは走るためにあるのであって、傷があるとかシートが汚いとか、年式が古いなどは関係ないのである。5年程度乗るのであれば、合理的に考えて中古車を買った方がお得である。日本の中古車市場もそれなりの規模であるが、ネットサイトで調べると、瞬時に日本中の目的の車種が一覧で出てきて、そこに数多く貼られた写真を眺めて、さらに諸元を確認すれば、現場に行かなくても状態が完璧に把握できる。昔中古車屋をひとつずつ回って、なかなか良い車に出会えず、営業マンに好みでもない車を強引に紹介されたりして疲弊していたのが懐かしいぐらいだ。

また慶が驚いたのが中古パソコンである。東芝のダイナブックの中古を買ったのだが、価格は26,000円ぐらい。これにマイクロソフトのオフィスが既にインストールされている。ノートパソコンというのは、新品でも29,800円を切ることがなく、おおかたは4万円からである。これに3万円するマイクロソフトオフィスを別購入すると、6万円以上となる。これが中古だとたったの3万円弱である。半額だ。パソコンというのは物理的に壊れていない限り、中古も新品も使い勝手は変わらない。せいぜいバッテリーが弱っている程度だが、バッテリーは交換しても安いものだ。中古に出ているパソコンは、会社などでリースで使われていたものを回収して中古市場へ流しているので、決してボロボロではない。一昔みたいに、CPUの性能でパソコンの使い勝手が左右されることはなくなり、4,5年前の機種であっても何の違和感もなく使える。

東京オリンピックを過ぎるとインバウンド効果を期待した企業の投資欲が薄れて、またジリジリとデフレに戻っていくかもしれないが、その時は中古市場がしっかり機能することを期待したい。

 

2018年10月22日 (月)

昔の改札風景

鉄道切符の改札は日本全国ほぼ自動改札機へと切り替わっている。稀に地方では未だに有人改札しかやっていない鄙びた駅もあるが、県庁所在地や人口20万人を超える都市近郊など利用者の多い駅では、ほぼ全て自動改札機である。この自動改札機は1960年代に関西で誕生したものだ。慶が小学生や中学生の頃に大阪の親戚のところへ遊びに行くと、駅でこの自動改札機に出くわしてドギマギしたものだ。慣れてしまえばどうってことはないのだが、跳ね返されると満座のクイズ番組で不正解を宣告されたみたいで実に恥ずかしいし、「ありゃ田舎モンだ」とすぐバレる。正直苦手だった。
しかし、慶が大学生から社会人になった頃、それは1980年代末でバブルの最中に相当するのだが、東京に行くとなんと全て有人改札だった。かの大都会、国際都市の東京が有人改札なのである。なぜに大都会なのに有人改札なのか正直理解できなかった。地方の駅なら乗客が少ないので、改札員がボォーっと立っていて受け取った切符をじっくりと見てから切符の端を、偽造できないよう、冠型やホームベース型など変な模様の入った状態で切り落とす。それでゲートが滞留することはまずない。しかし東京は乗客数が半端ではないから、これを手動で改札するなど普通に考えて大変なことである。改札ゲートの右側には腰の高さまでの狭いボックスがあり、改札員はそこにすぽっと入って立っている。切符を購入したら改札員の左手に手渡すと切符を横にスライドさせて素早くカットしてそのまま客に渡す。客はスピードは落ちるが立ち止まらない。ハサミは右手にフィックスした状態でほとんど動かさず、ずっとカチカチと稼働させている。客が居ない時は黙って立っているが、切符を持った乗客が改札に近づいて来ると右手のハサミをカチカチと動かし始めて、鋭い視線で頭から足の先まで観察し、「さあ来い、切ってやる!」という臨戦モードに入るのだ。このカチカチ音はとても冷徹で乾いた響きで、いかにも「キセルは絶対に逃さない」と言わんばかりの印象が強いため、「ああ、東京にきたな〜〜」「130円の切符ごときでここまで徹底してやるか」と実感したものである。
東京では関西よりも自動改札機の導入が大きく遅れた。ただ国鉄が1987年4月に民営化されて、合理化の必要性が高まり、労働組合も強硬派がパージされておとなしくなったため、急ぎ自動改札の普及が検討されることになったそうだ。慶が体験した有人改札はその末期だったことになる。1990年に山手線に本格的に導入が始まり、あっという間に自動改札機に置き替わった。関西に遅れること23年の歳月が経過していた。
ところで、慶が30年前後ほど前に東京で実感した有人改札であるが、実際は言うほど混雑はして居なかったし、むしろその方が合理的だなと感じることも多かった。なぜなら、客が多い時間帯はゲートに立つ改札員の数を増やしていた。改札員の居ないゲートはシルバーの門が閉じられていて一目瞭然だ。要するに乗客の数に応じて人員を調整していたのである。これが自動改札など、ピンポーンと一人でもはねられると一気に滞留する。その昔は今のICカードタイプの自動改札機は普及しておらず、裏が黒い切符を吸い込むタイプばかりだったから、結構エラーが多かったのである。
また、そもそも東京は郊外からの通勤通学客ばかりなので、相当数が定期券で電車を利用している。定期券だと改札員に見せるだけだから、今のタッチ式の自動改札より断然早い。改札ゲートに近づきながら、首から下げたあるいは胸ポケットにコンパクトにしまった定期券を改札員に向けて大きく開いて見せて、切符で滞留している改札の横を無言でゲートをそそくさと通りすぎる。この東京の忙しく、クールな表情の群れが都会的であり、強く印象に残っている。それはETCありの車が現金清算するためにゲートで停車している一般車両を置き去りにするのと同じような光景だった。明らかに定期券利用者は優越感丸出しだった。改札員もそこを通過する通勤通学客も、「はやくゲートを無難に通過したい(させたい))」という緊張感に満ちあふれていたものである。
あと当たり前ではあるが、有人改札であれば、料金不足の時は改札員に不足分を払えばよかったし、何より人間が立っているわけだから、行き先や乗り場が分からなくても、直接聞けば手短にしかし親切に教えてくれる。そこは改札員でもあり、インフォメーション受付でもあったのだ。また本当にキセルで改札を出て強行突破しようとすれば、追いかけて取り押さえていたので、警備員にもなっていた。そういった意味で、有人改札はそれなりに合理的でヒューマンなシステムだったと再評価したい。1990_shinjukusta


2017年12月 3日 (日)

景気対策のためには貯めちゃだめだよ

アベノミクスが成功したのか失敗したのかさっぱり分からない状況になってきた。消費は低調、物価も上がらないので、デフレの様相を引きずっているが、人手不足で企業の倒産や支店の縮小を引き起こしているし、株価は上昇して企業の業績は一部を除いて悪くはない。何より税収は大きく増えている。景気が上向きな中で、人とカネが上手に回転しない、ちぐはぐな状態に陥っているのかもしれない。
企業業績が上がっているのに、それが社員へ還元されないこと、および報酬がわずかに上昇した社員も、貯金に回して金を使わない傾向にあるのだろう。実際国や自治体の借金も積み上がっているが、個人預貯金や企業の内部保留は微増している。従って、現在マクロ経済学的にやるべきことは、「もっと金を使いましょう」というキャンペーンである。
しかし、悲しいかな、この流れに思い切り逆行するCMが現在バンバン流れている。それはJAバンクのCMである。お口いっぱいに食べ物を食らってほっぺが大きく膨らんだ「チョリス」というマスコットキャラクターが登場し、「預金だ」「貯金だ」「貯めろ貯めろ」を連呼している。貯めることだけが最終目的の、まさにアニマルマシーンであり、今の世の流れと完全に逆行である。
Ja_chiorisu
JAバンクというのは、正式には「農林中央金庫」で、農林水産業の協同組合等を会員とする、協同組織の全国金融機関である。ざっくり説明すれば、農協や漁協の連合体が経営する、基本的には農協・漁協の組織維持のための、なんちゃって銀行である。しかし、これが銀行として評価するとすさまじい。連結総資産額は国家予算を超える107兆627億円 (預金総額は80兆円)、連結自己資本比率(国際統一基準)は総自己資本比率24.39%(平成29年3月31日現在)と恐ろしく巨大で優良な金融機関となっている。ちなみに日本国内最大のメガバンクである東京三菱UFJ銀行の預金総額は114兆円だから、その巨大さが分かると思う。当然だが、世界的な格付け会社の評価でも、メガバンクと同様の評価である。決してなんちゃってとは言わせない。
全国の平地や中山間地帯、あるいは津々浦々に展開する百姓や漁師が、その収入をコツコツと積み上げてきた成果がこのJAバンクに凝集されている。まさに、「貯めること」が目的化したような金融機関である。日本の農業も漁業も決して国際競争力はないが、こと積立金の額から言えば、もっと色んな展開ができそうだが、肝心のCMがこれだと、アベノミクスへ貢献するどころか、農林水産業の発展にも怪しい空気が漂う。いずれにしても、このJAバンクに貯まった80兆円、ゆうちょに貯まった177兆円をどう動かして国内の金回りを良くするかが、重要政策課題のような感じである。

2017年5月 1日 (月)

運送業界にみるアベノミクスがうまく行かない理由

昨今から運送業界の最大手「ヤマト運輸」が悲鳴を上げている。その最大の理由は取り扱い量の増大に人員が追いついていないというものだ。取り扱い量が増えた最大の理由は「ネットショッピング」である。最近はアマゾンと一括契約して、遂に現場も悲鳴を上げたという感じである。結局そのしわ寄せは料金値上げという形で消費者へ押しつけられるようだ。顧客第一の商売の世界で、販売額が増えているのに値上げとは実に屈辱的・皮肉的な結果である。この問題はヤマト運輸に限らないようで、なぜだか分からないが、佐川急便の配送員が荷物を蹴散らかしている動画まで拡散している。運送業界に何かが起きている。
ヤマト運輸はこの業界でサービスの質の向上に貢献してきたリーディングカンパニーである。時には自由競争において不利な規制があれば、国を相手に訴訟を起こしてきたほど、顧客重視、自由競争を標榜する企業である。そのヤマト運輸が生み出したサービスが、個人客を相手とした小口超特急配送の「宅急便(宅配便)」であった。荷物1個でも玄関まで数日中に配達するという、今では当たり前のサービスだが、ヤマト運輸が切り開いて市場競争を仕掛けたからできあがったサービスだ。もしヤマト運輸が商品開発していなければ、この市場は今頃フェデラルエキスプレスなど、アメリカ企業に席巻されていただろう。この宅急便をさらに進化させたのが、冷蔵・冷凍で生食品を取り扱う「クール配送」、好きな時間帯に目的の品物を届ける「時間帯指定」サービスなどである。空港でもゴルフ場でも、荷物を確実に届けてくれるありがたいサービスだ。特に海外旅行に行く場合、でかいスーツケースを抱えて電車に乗るとそれだけで迷惑なので、慶もこのサービスは良く利用している。
これほどフロンティアとしてチャレンジし続ける企業が、ネットショッピングによる配送量増大に対応できないとはにわかに信じがたい。この問題は明らかにヒトの問題だ。明らかにヤマト運輸は配送量増大に対して、人員を大幅に増やすことを躊躇している。おそらく大動脈であるメインの配送センター間の輸送は問題ないのだろう。それを配送センターから各家庭の玄関まで届けるのに恐ろしく人手が必要となり、コスト圧迫要因となっている。だから、人手が簡単に増やせないのである。
ここにアベノミクスが失敗している理由が凝縮されれている。企業はいくら需要があっても、余程のことがない限り、設備投資も新規雇用もやらないのである。一頃中国人観光客が押し寄せていた時に、マイクロバスの供給が追いつかないという事態があったようだが、決して新しくバスを購入したり運転手を雇用したりしなかった。この景気も「一過性」という認識があって、設備投資や雇用を増やした後に、それが企業経営の重荷になることを何より恐れているのである。これはデフレの20年間を通じて、日本人のDNAまで染みついた慢性疾患のようなものである。
いくら毎月金曜日の昼下がりに早く帰れと言っても、国民は決して浪費しないだろう。同じよううに、企業も決して設備投資や新規雇用をやらない。それこそ、死人が出て、やっと付け焼き刃的な対応しかやらない。あれだけ金をじゃぶじゃぶ市場に流しても、企業の設備投資も業績もあまり上がらず、威勢が良いのは銀行の金貸しばかりだ。スマホでローンを申し込んで、ATMで返済など、クソいい加減な融資手法ばかりが旺盛である。いつから銀行は消費者金融業に成り下がったんだ????、それがアベノミクスの主力産業なのか?
自民党が景気対策に本腰を入れるなら、企業については新規投資による利益が出た部分は何年か非課税にするとか、個人では今の社会保障制度を抜本的に見直し、財産放棄者を死ぬまで面倒見る新しい制度を導入することで、土地や現金の動きを加速させるしかない。慶は国民が手許に資産を残さなくてもマトモに老後が過ごせるようにするのが最大の景気対策だと言い続けている。

2016年11月 3日 (木)

MRJは確実に失敗プロジェクトとなりそう

Ys11

三菱航空機が鳴り物入りで開発する国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の機体トラブルが収まらない。アメリカへの試験飛行へ向かったとたん、2度も機器トラブルでUターンして来るという失態を繰り返したあげく、初納入の時期が、これまで目標としていた2018年半ばから大幅に延び、2019年以降にずれ込む見通しとなった。MRJの納入延期が決まればこれで5回目。当初1号機の納品は2013年だったので、最低でも5年以上遅れる見通しだ。
技術的な問題で納期を延期し続けるということは、元々国際航空機市場で実績のない日本にとっては「致命的な傷」である。加えて、大手のエンブラエル社(ブラジル)は、MRJと同じエンジンを搭載した競合新型機を2018年にも初納入する予定との情報が出ている。元々低燃費の飛行機を約5年先行して開発していたMRJが納期で抜かれることとなり、おそらくそうなるとMRJの売り先がなくなる可能性が大きい。価格的にも競争力がないようで、普通に考えればMRJは既に死に体である。
関連メーカーがひしめく名古屋周辺では、トヨタに続いて世界市場へ切り込む切り札だと勝手に盛り上がっているような感じだが、このように現実は厳しい。このMRJの動きをみていて、慶は機体の相次ぐトラブルと経営赤字により生産中止に追い込まれたYS-11が脳裏に浮かぶ。YS-11を生産した日本航空機製造は、三菱重工業を中核とした企業だったから、余計に「またか」という雰囲気が漂う。

皆さんはYS-11という飛行機を知らないだろう。既にリタイアして20年以上経過する飛行機だから。このYS-11は地方路線で良く飛んでいた。慶も何度も利用したことがあるが、最悪の飛行機だった。その機体を見るだけでむしずが走る。まずうるさい。この飛行機はジェットエンジンとプロペラが一体化したエンジンが主翼の上に乗っている。客室から丸見えで、特にジェットエンジンの吹き出し口はなぜか主翼の上にへばりついているので、黒い焦げたすすが見事に丸見えであり、そのアナログさに不安感が倍増する。動き始めるとプロペラの「ブーン」という低音の響きと、ジェットエンジンの「ゴォー」「キーン」という切り裂くような音が交錯し、まず室内は何かの工場の中のようにうるさい。気軽に会話したりウトウト寝るなど無理。さらに離陸も着陸時も激しく揺れ、特に着陸時はガクン、ガクンと無重力状態を繰り返しながら高度を下げてゆく。図体が重い割にエンジンのパワーがないのである。さらに最悪なのは横風や雨雲に弱く、「普通の雨で欠航」というのもザラ。だからYS-11が運行しているというだけで、旅行客は憂鬱になるのである。
MRJの乗り心地や性能はよく分からないが、もしエンブラエル社やボンバルディ社の飛行機と比較して技術的・価格的にトントン以下であるなら、さっさとあきらめたが良い。これ以上金を突っ込んで赤字を積み上げるのは望ましくはない。開発段階でこれだけトラブル続きということは、納品しても同じようにトラブル続き、YS-11と同じ運命をたどる恐れが高い。どこかで計算の甘さや技術者の慢心があったのかもしれない。三菱重工業という会社は、重厚長大モノに特化したがる体質があり、実は好んで受注した大型客船の方でも大赤字を垂れ流している。
航空機産業など成熟産業であり、今更日本が参入してもそんなに利益は出まい。要するにレッドオーシャンなのである。それよりも、家庭用AIロボットなど、他に投資すべき技術開発は目白押しであり、そっちはまだまだブルーオーシャンだ。飛行機などより、身の回りの民生品に日本の技術開発力を突っ込んだ方が成長産業として期待が大きい。

2014年1月 4日 (土)

食欲は容器でも誘われる

昨年ごろにスーパーやコンビニなどの惣菜や弁当入れとして使われる食品トレーの進化が、中食産業を大きく成長させたという記事を書いた。食べたらすぐにゴミと捨てられる食品トレーを、まじまじと眺めることはないが、今回寿司を食べた後の容器が結構できが良いので、比較をしてみた。
Cucumber_and_surimi




上の写真は寿司が入ったトレーの裏側(タダの白地)に、かっぱ漬とカニカマを乗せたもの。そして、全く同じトレーの表側、デザインが入った側に同じものを載せたものが下の写真になる。一目瞭然であるが、同じ食品を載せても下の方が立体感があり、いかにも美味しそうである。だいぶ前にテレビでも同じ弁当でデザインの異なる容器に入れて販売する実験をやっていたが、下の写真のような縁取りに派手な柄模様が入ったトレーが飛ぶように売れていたのを覚えている。
人が人を見るときもルックスが8割である。整形した大久保の仕事が急に増えていることからも、見た目、ルックスは極めて重要である。この法則はすべての分野に共通するようだ。映像の持つ力は偉大である。弁当でも人は見た目、特に全体の構図で判断しているか良く分かる。個別の具材は思ったほど見ていないようだ。このトリックを遺憾なく発揮しているのが幕の内弁当で、切り昆布とか里芋とか漬物とかショボくて小さい具材しか入っていないのに、容器の派手さで騙される。食ってみると全然お腹いっぱいにならない。
容器に限らず、自宅での食事でも盛りつけの皿や容器は重要である。個人個人、お気に入りの容器は異なる。慶は洗い物が大嫌いで、何でも一つの皿に盛りつけて食べるのが好きである。そうすると、やや楕円タイプで大きめの深皿を好んでいる。サラダでも、カレーでも、炒め物でも、スープでも、何でも入れることができる。ただし、無地のデザインではなく、一つは緑地にピンクのバラが入ったもの、もう一つは白地にやはりピンクのサクラの花びらが入ったものがお気に入りだ。背景に明るい花がデザインされていると、とても艶やかで元気がでる。
居酒屋や小料理屋とかに行くと、訳の分からないデザインの容器がよく出てくるが、組み合わせが下手くそである。少し値段の張る料理屋とかに行くと、有田焼の立派なデザインの皿に盛り合わせられて料理が出てくるが、これは実に豪華である。藍色と紅のコントラストが鮮やかな有田焼のデザインは、和食にも洋食にもすごくマッチする。
食品トレーの大手であるエフピコのホームページとかを見ていると、凄まじいバリエーションのデザインがあるのだが、食品トレーはしょせん一期一会である。自宅で使用する食器は毎日ずっと使うものだから、できれば自分が納得するまでチョイスにチョイスを重ねて、到達点となるようなものに出会えるといいなあと思う次第である。