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2022年5月 5日 (木)

ローカル番組をローカル局で放送する摩訶不思議な世界

Nishimura_camp

番組公式 ツイッターより

 

 

毎日帰宅すると晩飯でも食べながらテレビのスイッチを入れるのが日課みたいになっている。夕方のゴールデンタイムは在京テレビ局が制作した全国区の番組が流されている。日本のあらゆる経済指標が最大値を示していた1980年代後半~1990年代中頃から比較すると、在京民放各局の番組制作費の原資となる企業広告費が大幅に縮小し、当然個別の番組制作費もこれに従って低下してきて、非常にお粗末な番組ばかりになっている。食レポ、街ブラ、クイズ、ひな壇芸人のディスり、だいたいこんなもんだ。Googleマップで探した山奥の一軒家に、番組ディレクター見習いがレンタカーで出かけて昔話を聞くだけという、実にしょうもない低予算番組などもある。実にバカバカしい。この程度の内容ならYouTubeで観た方がまだマシである。

予算のある時代の番組はどうだったか。「なるほど!ザ・ワールド」などは海外ロケで世界中を飛び回るなど、制作費の高い番組の代表格であった。しかも旭化成グループの1社スポンサー。現在も「日立世界ふしぎ発見」などに名残はあるが、これは観光地を巡るだけの街ブラの海外版というだけのことだ。クイズ番組もタイムショックが典型的だったが、セットに金がかかっていた。ほか、伊藤テリーが制作した番組など、バラエティーに素人を出すにしても、とにかく数が多かったし、セットに金かけていた。ドラマなども、北の国からのように、映画クラスのクオリティーだったものだ。もう、こういう時代は来ないのだろう。資本主義社会である以上、金がなければ、量も質も下がるというものなのだろう。

現代に戻る。土日になると、全国区の放送局の隙間となる時間帯の穴を埋めるべく、在京の放送局ではないローカル局制作の番組もチラチラある。最も多いのは地元のローカル局が制作する番組で、多くは週末のイベント情報、地元のスポーツチームの応援、お店の紹介あたりで、その土地ではそれなりに有名なレポーターを交えた情報番組である。これはこれで地元密着で良いのだが、芸能人はほとんど出ていないので、ケーブルテレビの延長戦的な雰囲気がプンプン漂う。ケーブルテレビで良い情報なら、地上波でやる必要はない。在京ではないが、関西の放送局が提供する番組というものも結構ある。上沼恵美子、たむらけんじ、笑い飯あたりが出てくる番組である。また大昔だと、名古屋のテレビ局が提供するまったりした昼ドラというのもあったりした。在京の番組とは異なる視点で制作された番組というのも、金こそかかってはいないが、たまに観ると新鮮感があるものだ。

こうした状況で、近年少し風変わりなローカル局作成番組がローカル局同士で放送されている。一例を挙げると、テレビ新広島(TSS)が制作する「西村キャンプ場」である。出演者はバイきんぐの西村1人。バイきんぐのもう一人の相方である小峠の方は全国区で引っ張りだこであるが、西村の方は全国区ではほとんどテレビ出演の機会がない(すなわち売れてない)のだが、西村は出身地の広島ではこの番組をレギュラーで務めている。わかりやすく言えば、都落ちして地元に戻ったという感じである。それにしても、この番組、かなり異質だ。まずローカル局制作なので、広島県内しか取材対象としていない。しかもスタジオ収録は一つもない。タイトルに「キャンプ場」とあるので、広島県内の都市部は目もくれず、ひたすら山間部や島嶼部など僻地を攻めまくっている。西村本人が車を運転して僻地へ繰り出し、そこで本当にたまたま出会った地元民に西村自身が取材交渉しつつ、キャンプ飯の食材をタダでくれという流れである。昔田舎に泊めてくれという筋の悪い番組があったが、それの食材くれバージョンだ。スタッフは後ろをついていくだけの超低予算番組、出会った人は西村本人にひたすらモノくれとねだられる、実に失礼極まりない、筋の悪い番組である(笑)。

しかし、そこは西村のキャラでうまく笑顔と体育会系の爽やかなお礼で乗り切り、ちゃっかり食材を提供して貰うというオチになっており、最後は無類のキャンプ好きの西村がオリジナルキャンプ飯を披露して、人生を語って終わるというものだ。キャンプ大好き芸人である西村のキャラに引っ張られて、結果的に番組としては良くできている。また、この番組を観ていて、広島県というのは海と離島の美しさだけでなく、森も川も清らか、山間部は山深く、雪国のような積雪に覆われるなど、自然のグラデーションが素晴らしいところである。アカデミー賞を受賞したドライブマイカーのロケ地になった理由も分かる。全国区の番組で広島と言えば、宮島と原爆ドーム、お好み焼きとカキしか放送しないので、改めて色んな発見があるものだ。

それにしても何がすごいかと言うと、この番組、北は北海道から、南は熊本県まで、全国16局で放送されているのである。例えば、広島県とは縁もゆかりもない山形県の人たちは、ゴリゴリの広島の田舎で広島弁だらけの地元民と西村の掛け合いを観ているのである。山形県の人にとって、広島県の田舎は基本どうでも良い。まして、言葉が全然違う。この番組をみて、行ったこともない、ガイドブックにも載っていない広島の田舎の、怪しい広島弁のやりとりを観て一体どう思っているのか、実に気になる(ほとんど視聴率はないだろうな)。

しかし、例えば山形県でも同じようにオリジナルのローカル番組を制作して、同様に全国のローカル局に配信すれば、WinWinである。田舎には、田舎同士で共感する人情なり老いの寂しさ、田舎の不便さの中でみつける自然の恵みへの感謝があるものだ。こうしたローカル局の提供するローカル番組が広がれば、在京局の番組やYouTubeにはない魅力が発信できるかもしれない。地上波テレビの衰退とYouTube隆盛の流ればかりが話題になっているが、ローカル局の発信力に慶は密かに期待している。

 

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