地方の魚肉練り製品を改めて見直す:仙崎かまぼこ
魚肉練り製品は水産業が盛んな地区では必ず特産品として売られている。ただ練り物というのは、やはり畜肉や魚介類と比較して見た目がしょぼいので、これを特産品としてもなかなか消費が増えるところまで至らない。
割とメジャーなかまぼこは、宮城県の笹かまぼこと鹿児島県の薩摩揚げである。笹かまぼこは表面が竹輪ほどではないがぱりっと焼かれていて、笹の葉のような形のシャープさとぷりぷり感が楽しい。中にはチーズが入っているものもあったりして、バリエーションがすばらしい。全国チェーンのコンビニなどでも結構売ってある。難点は、見た目のバリエーションがなくパッとしないことか。薩摩揚げは南九州らしく、「これ焦げているのか?」というぐらいしっかり揚げてある。油もベトベトだ。要するに、荒削りで、何の飾り気もないのである。味は無茶苦茶甘くて(砂糖の添加量が多い)、特に関東の人には受け入れ難いだろうが、これが酒のおつまみとして食べると飽きないのである。特に焼酎と薩摩揚げは良く合う。ただし胸焼けに注意。
西日本、特に魚肉練り製品が食卓によく登場することで知られている中四国地区で、かなり個性的で飽きない魚肉練り製品が3つあるので順次紹介する。今回は仙崎かまぼこである。
仙崎とは、山口県の山陰側にあるひなびた町の名称だ。長門市の少し南側に湯本温泉というのがあり、ロシアのプーチン大統領が来日した時に首脳会談が行われた。長門市には安倍前首相のお父さんのお墓があるように、要するに安倍前首相の地元である。山口県長門市仙崎地区は魚肉練り製品産業が盛んで、「仙崎かまぼこ」というのがブランド化してる。どこの業界もなんちゃら協会とかを組織して、品評会などお手盛りの審査会をやっているものだ。かまぼこ業界も、「全国かまぼこ連合会」というのがあるようで、そこの全国蒲鉾品評会の過去の受賞一覧がネットに出ているので見てみると、かまぼこ業界の雄である塩釜市や小田原市と肩を並べるほど、この仙崎市のかまぼこ業界は毎年健闘しているようだ。
仙崎かまぼこの特徴は、「焼き抜き」といわれる山口県独自の伝統手法で、調べると、かまぼこ板の真下から間接的に焼きぬくとのこと。表面に直接火をあてないため、蒲鉾の色は真っ白で、表面は樹皮状のちりめんじわができる。コレが見た目の最大の特徴だ。焼き抜きは、焼成温度が低く、肉温の上昇が緩慢なために、鮮度が落ちているとかまぼこの良し悪しを決める歯切れの良さが失われるらしい。鮮度が良ければ日持ちは十分ということで、焼き抜きは魚の鮮度が命であり、好漁場と漁船団を保有している長門ならではの製法らしい(長門市のホームページから要約)。
この仙崎かまぼこは、見た目は普通のかまぼこで表面にしわが入っているだけで良くある板付きかまぼことの違いは感じない。裏返すと板が焦げているのが特徴だ。一口食べると恐ろしく弾力があって、まさにプリプリである。なんともうれしくなるテクスチャーである。スライスして醤油をわさびを付けて食べるだけで、立派な主食となる。魚の味もしっかりついており、「これこそ正真正銘のかまぼこ」という感じがする。板かまぼこというのは、ピンクに色つけされたものが多く、見た目は変化が少ないのだが、食べた時の味や食感は製品によって大きく異なる。魚や製法が良くないのは、べちゃっとして魚の生臭みが強い。その土地の練り製品が上等かどうかを見極めるのには、この板かまぼこを食べて基礎力判定するのが近道である。
« 自由民主党総裁選3候補の主張を聞いて | トップページ | 日本民族の成立過程ー1/2 »
「グルメ・クッキング」カテゴリの記事
- ダイコンで思うこと(2022.01.03)
- ローソンの200円ウインナー弁当は時代を逆行(2021.10.04)
- 最強のアペタイザーかもしれない「ところてん」(2021.08.06)
- 再び、ソース、ケチャップ、マヨネーズを使おう!(2021.06.29)
- ブレーキとアクセルを激しく繰り返す荒い運転(2021.04.24)
コメント