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2020年8月21日 (金)

天才ビリー・ジョエルの豹変には戸惑った

Uptown-girl

ビリー・ジョエルは、慶が小さい頃に既に絶頂期に達していたミュージシャンだ。ピアノの弾き語りベースであるが、ロックの旋律を織り交ぜつつ、ハーモニカ、バイオリン、サックスなどちょっとフュージョンっぽいノリの素晴らしい楽曲を提供していた。活動拠点がニューヨークであったので、大都会の殺伐とした光と影を歌い上げている感じで、まさに大都会の、クールでかっこいいミュージシャンである。佐野元春などはこれに感化されまくって、完全にパクリ状態になっていたのを記憶している(しまいにはニューヨークに移住してたし)。1970年代後半のヒット曲としては、ストレンジャー、オネスティー、素顔のままで、ピアノマンなど、すさまじい名曲を連発していたものだ。

すっかり社会派というイメージが付いたので、1982年に「ナイロンカーテン」というアルバムが発売された時も、今で言うところのラストベルトを歌い上げたアレンタウン、ベトナム戦争の後遺症を歌い上げるプレッシャーやグッドナイト・サイゴン〜英雄達の鎮魂歌-など、アルバムに含まれる楽曲は当時アメリカが抱えていた社会問題、ベトナム後遺症などをテーマにした、極めてシリアスな作風となっていた。

ところが、それからわずか1年後の1983年に新たなアルバム「イノセントマン」を発表。前のアルバムから1年しか経過していないのに、新しいアルバムとは一体どうしたのかと思って、これを聞いたファンは仰天してしまった。どの曲も60年代のモータウン調で、軽快でポップな内容で、当時MTVなるミュージックビデオもシングルカットと同時に放送されていたので、曲のみならず、映像も実に尻軽いものもので、それまでのビリーの真逆の内容であったのだ。ファンは皆動揺した。そこにはピアノもハーモニカもサキソフォンも存在しないのである。これまでとイメージがまるで違うのである。しかし、曲がわかりやすくて調子も良いので、じゃんじゃんヒットしてしまった。

この豹変理由は、なんと古女房と別れて新しい姉ちゃんと付き合い始めたからだという。要するに恋に落ちて、勢いで作ってしまったアルバムなのである。その新恋人はアップタウンガールのPVに実際に登場している。ビリージョエル34歳の時の出来事だ。
「君子豹変」とはよく言われるところだが、人はゼニカネが絡まない限り早々に豹変できるものではない。増して今まで積み上げてきた偉大なイメージの上に乗っかって大物ミュージシャンとして祭り上げられている時に、恋人ができたからと過去を全部打ち捨てて新路線というのは誰にでもできるものではない。日本のミュージシャンなど、吉田琢郎も、サザンオールスターズも、井上陽水も、ユーミンも、長渕剛も、30年間以上路線は同じで顔にマンネリと買いてある。最近で見ても、perfumeもきゃりーぱみゅぱみゅも路線は変わらない。変わらないからファンは不動だと日本人は信じて疑わない。そういった意味で、やはり平気で、すべてをうち捨てて豹変できるビリージョエルは、結果的に偉大で天才なのだろう。

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