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2020年8月 5日 (水)

戦狼外交で自滅する中国

Saikeinewspaper

ここ数年、米中の経済摩擦に端を発する対立が激化していたが、2月以降に世界的拡大をみせた新型コロナウイルスによるパンデミック、さらには香港の民主化運動弾圧も加わり、米中対立が日々激化している。遂にはアメリカと中国の双方が領事館への「退去命令」を出すほどだ。経済摩擦から政治的な対立へと段階が変わってきている。

少なくとも2,3年前までは、 アメリカに限らず西欧諸国は、中国をさんざん甘やかし、野放しにしてきた。いや、世界の工場ということで、中国への投資を積極的に行って、中国の私腹を肥やす手助けをしてきたと言える。そこで得られた貿易黒字で成金化した中国人相手に、自動車や贅沢品を売りつけて利益を回収していたと言える。アメリカ(特に映画業界)やドイツ企業(特に自動車業界)の中国接近は嫌らしいほどだった。日本は古代から中国とは是々非々の付き合いで通し、2000年以降の中国バブル時も、淡々と民間が手堅く投資して利益を稼いでいただけで、相手の懐にどっぷり入り込んだり魂を売ったりするようなことはしていない。「金の切れ目が縁の切れ目」とばかりに都合が悪くなればいつでも逃げ出せる態勢だった。とにかく中華思想で朝貢関係に固執する国なので、付き合い方を間違うと火傷する。

中国はリーマンズショック以降、アメリカの覇権に陰りが見えていると読んで、今このタイミングでしゃしゃり出れば、パックスチャイナも不可能でないと完全に思い込んでいる。それは多少当たっている予測だが、アメリカの覇権はまだまだ簡単に揺らいでいる訳ではないし、政権が代わったので、現在はオバマ政権のようにボォーっとしたアメリカではない。

そのボォーっとしていたアメリカを先頭に、いわゆるファイブアイズと言われるアングロサクソン国家が急に手のひら返しで反中に舵を切ったのである(ドイツは相変わらず毒まんじゅう食わされた状態)。中国との貿易で利を稼ごうと風見鶏を決め込んでいたヨーロッパ諸国も、新型コロナウイルスと香港での人権侵害、あるいはカナダやオーストラリアに対するあからさまな外交的・政治的報復、札びらで顔を叩かれて首が回らないイタリアなどを見るにつれて、中国離れを引き起こしつつある。

また中国側も非常にまずい対応ばかり繰り返している。特に、自らのイメージを高めるために、まずは国内向けに世論工作や人権弾圧を展開し、諸外国には経済的圧力をかけたり、謝意を直接要求する、或いは気に入らない外国の国民を難癖付けて身柄拘束して強制裁判に付して処刑するといった強圧的ともいえる行動は、挑戦的・脅迫的で恩着せがましく、まさに「面の顔がどこまでも厚い」「専制国家」の態度だ。ただ中国という国は古代から面の皮がどこまでも厚いことは周辺国が良く知っている。今に始まったことではない。特に今の中国共産党の特徴でもあるが、アメリカが主張するように、各種の知的財産権を搾取し、ひどい場合は国家的ハッカー集団を使って情報を盗み取ろうとしている。さらには、インド、南シナ海、東シナ海で領土拡張のための侵略と言える現状変更の動きを加速させている。これで世界の共感など得られる訳はない。全方位で紛争を起こすことは、外交的に百害あって一利なしというものだ。外国から見れば、成金化して急速にごう慢になったとしか映らない。まさに中国のロシア化である。

もし中国人に常識があり、多少知恵が効くなら、世界中を敵に回して戦狼外交を展開するなどあり得ない。しかし、それをやらないと前に進めないということは、中国共産党の焦りが垣間見える。その焦りの原因は、以下の4点だろう。

1)神格化された習近平国家主席の顔に泥を塗らないように、新たな敵にはすべて反論・反撃する
2)経済成長率が低下して、人民の不満が爆発しないように気をそらす必要がある
3)アメリカが態勢を立て直す前に覇権確立に向けて先手を打たねばならない

4)覇権に向けて手を打っていたのに、アメリカの想定以上の反中共攻撃、急旋回に対応が後手に回ってうろたえている

中国としては、トランプ政権、いや元々反中傾向の強い共和党政権ではなく、民主党政権に代わることを望んでいるだろう。しかし、代々親中的である民主党政権になったとしても、いまのアメリカの安全保障や貿易に関わる官僚たち、あるいは議会の大物議員たちは、すべて中国を大警戒して、あらゆる中国囲い込み策を日々立案・施行している。これは程度の差はあれど、民主党政権になっても同じだ。かつて80年代の貿易交渉とそれに続く日米構造協議で日本がアメリカ官僚に痛めつけられて経済成長に急ブレーキをかけられたように、中国もそれよりもより大規模で強い態度でアメリカに痛めつけられるのである。かつての日米貿易交渉は2国間交渉だったが、今度中国が立たされている立場だと、世界対中国であって、味方は1カ国もない(あっても属国の北朝鮮と韓国ぐらいか)。ロシアでさえ、流れ弾に当たるのが嫌なので、しらんぷりを決め込むに違いない。

かつての日本はアメリカの要求を全部飲んで死んだふりをした。貿易交渉で最も壊滅的な影響を受けるはずだった牛肉畜産業界もミカン農家もだいたい生き残っている。半導体業界も無理矢理アメリカ製のシェアを上げさせられたが、当時は需要が拡大していたので影響は軽微だった。日本が没落したのは、アメリカとの貿易交渉ですべて煮え湯を飲まされたからではなく、同時期に進んだ土地と株の値上がり期待だけで拡大したバルブ景気にうつつを抜かし、1990年代に経済が死ぬ一方手前まで貧血状態に陥ったからだ。その構図は今の中国と非常に重なる。中国もアメリカとの対立を抱えた状態で、国内は不動産バブルが収まる気配がない。これらが一気に表面化した時に、中国バブルもはじけるのだろう。

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