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2020年2月10日 (月)

新型コロナウイルスでクルーズ船受難

 

Diamond-princess

毎日繰り返される新型コロナウイルスの感染問題。一時期は武漢からチャーター機で帰還した日本人の感染状況に報道が集中していたが、このところ話題が豪華客船の方に移行している。感染者を多数出して居るのは「ダイヤモンドプリンセス号」。総トン数11万5875トン、全長290mの超巨大クルーズ客船である。我が国の伝説の軍艦である戦艦大和が7万2,809トン、全長263mだったので、その巨大さが分かる。実際にテレビで見ていても、船の上にマンションを乗せて運んでいるような映像だ。ちなみに水面からの高さが54mあるが、12階建マンションの高さはおおよそ40mなので、まさにマンションを積んだ船に相違ない。調べてみて気がついたが、この船は日本で建造されている。

これだけ巨大な船に、旅客と乗組員の合わせて3,800人が乗り込んでいるのだ。この3,800人が飲み食いから遊びまで、優雅に暮らせるようにありとあらゆる設備が整っている。オーシャンビューの客室はもちろん、レストラン、プール、展望浴場、フィットネスセンター、劇場、バー、ディスコ、美容室、映画館、テニスやバスケットコート。豊かな収入をつぎ込み、残された短い余生をこのクルーズ船に託して、世界中を回る。なんとも優雅で、理想のような過ごし方ではないか。

しかし、このクルーズ客船も、目に見えない小さな微生物、ウイルスの前には無力だった。船という密閉空間で、ヒトからヒトへ感染する能力に飛び抜けて長けた新型コロナウイルスが蔓延し、旅客ともども横浜港に留め置き状態となっている。世界中どこにでも海を滑って移動できる客船が、港に留め置かれて、日々感染者が船内で拡大して行っている。夢の豪華客船が、一気に隔離病棟へと墜ちた瞬間を我々は目にしている。

船ほど、世間から隔離された空間はない。まず船から外に出たら、そこは底なしの水たまりだ。一度落水すれば、生きて帰ることはできない。サンフランシスコの目の前にあるアルカトラズ島が、絶対に脱獄できなかった牢獄だったというのは、周りを冷たい海水に取り囲まれているからである。逆に言えば、船というのは不可侵の存在であり、古くは「海賊」がやりたい放題の時代もあった。まさに神出鬼没。一方で自走できなくなれば、ただの漂流船、すなわち「喪船」と化す。船とは実に不思議な存在である。

今回ダイヤモンドプリンセス号がこれだけネガティブに注目されると、誰もクルーズ客船など乗ろうとは思わないだろう。この問題は、現在進行形で進んでいるウイルス感染よりも、これが一段落した後の集客力の低下、風評被害の方が甚大だ。船という閉ざされた空間では、そもそも衛生上の問題が非常に大きいことが露呈した訳で、健康と安全にうるさい高齢者がここに敏感に反応するのは当然だ。毎日感染者が増え、持病の薬は底をつき、精神的に追い詰められても下船することさえできない。ある意味生き地獄だ。しかし何が一番辛いかと言えば、世間の無関心さだろう。船で隔離されているから世間一般の人にとっては他人事、何より困っている乗客も相当な金持ちばかりだから、「自分で解決したら〜」と覚めた目線でテレビを見ている状態だ。

このあと、ほとぼりがさめたとしても、困ってこの船は茨の道が待っているだろう。集客力を取り戻そうとして、今後ディスカウント販売しても、客は絶対に元には戻らない。少なくとも、日本人客は限りなくゼロになる。こうして見ると、このビジネスモデルも、非常にリスキーで、博打や高価なサービス業になれていない日本人には手出しができない世界だなと思った。

 

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