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2019年11月 9日 (土)

PDCAでもPDSAでもない、PDSKサイクルを提案する!

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働き方改革とか声高に言われるようになると、会社の上層部や人事部が経営あるいは労務コンサルタントか何かに聞きかじってきた「PDCAサイクルの徹底」などと言った教科書的な組織運営を掲げてくることがある。このPDCAサイクルというのは、品質管理を構築したウォルター・シューハート(Walter A. Shewhart)、エドワーズ・デミング(W. Edwards Deming)らが提唱した。このため、シューハート・サイクル(Shewhart Cycle)またはデミング・ホイール(Deming Wheel)とも呼ばれるそうだ。

Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する
Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする

要は品質管理の概念なのであるが、これが組織における業務運営まで拡大解釈されている訳である。行動原理を日常用いる動詞4語で表して、これを繰り返すという、実に単純明快な論理である。しかし、慶に限らず、多くの日本人がこれを眺めてもピンと来ない。特に途中のDoと一番最後のActの違いが分からない。Plan, Do, Check, DoのPDCD反復の方がまだ理解しやすい。

実は考案者も晩年、『PDCAにおけるCheckを単なる「点検・評価」に終わらせてしまってはならない、深く考察し、反省し、学び(Study)、共有する事こそが、次のAct(処置・改善)に繋がる』と訴えていた。そうなると、PDSAとなるが、これでもDoとActの関係・分担が曖昧である。

そもそもDOの段階において、進捗状況を監視(モニタリング)しながら計画と合っているか点検をしなければならない。従って、checkだけでは不十分である。そういった意味で、ここをSee(状況を収集しながら同時に監視もする)という単語に置き換えたが良い。一方、次の計画Pに繋げるためには、それら一連の作業の結果を考察し、反省し、具体的に改善することが必要だ。学ぶだけでは不十分である。この考察、反省、具体的改善の一連の複雑な過程を短い動詞に置き換えることは不可能ではないか。少なくともActではダメである。改善するというのであれば、improveである。しかし、ここには考察と反省が含まれない。一段上を目指すという意味ではstep-up、というのもあるが、具体的な改善の過程が見えない。endeavorというのはゴールに向けて頑張るという意味で、精巧な改善策を含まない。評価結果を個人レベルで留めてはならず、所属部門はもちろんのこと、組織全体の共有財産とした後、実践しないと次のPへ繋がらない。これらの難しい表現は英語では無理なので、ここで慶はKAIZENという日本語を入れるべきと考える。すなわち、Plan (P), Do (D), See (S), Kaizen (K)の「PDSKサイクル」である。

Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
See(把握・監視):業務の実施が計画に沿っているかどうかを把握・監視する
Kaizen(改善):実施が計画に沿っていない部分を検証・反省、組織全体で共有し、具体的かつ合理的な対応策を確立する。

しかし、実はPDCAサイクルだろうが、慶がここで提案したPDSKサイクルだろうが、これは理論の世界の話であって、これを日常繰り返していると絶対にスピードが出ないし、本当にゴールに向かっているのか分からなくなるに違いないと思う。理論や過程が正しくとも、結果が目標に近づいているとは限らない。PDCAサイクルは、「このように行動すれば成果が上がる」という工業的・理論的概念として存在できるが、人間の自然な性質には一致しないだろう。人は常に行動しながら微修正を施して日々をサーフィンしている。これは日本語で「順応的管理Adaptive Management 」と呼ばれる概念だ。まずやってみて、うまく行かなかったら都度都度修正する。上手に表現すれば順応的管理だが、いわゆる「行き当たりばったり」である。しかし、この順応的管理に、小さいながらもある程度精巧なPとKで挟み込むことができれば、実にスピーディーにゴールに向かって突進できる。現代ビジネスのように、将来予測が難しい、不確定要素が大きい場合は、むしろこの方が合っているに違いない。

2019年11月9日 泉水谷慶彦

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