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2013年12月 5日 (木)

フグの季節

そろそろ年末の忘年会シーズンが近づくと、冬料理が本格的になってくる。日本には四季がある関係で、食材も当然季節によって旬が異なる。陸上のものでは冬が旬というものは意外と少なく、白菜、ジュンサイ、レンコンぐらいなものである。寒くなると草木が枯れるから当然と言えば当然である。一方、海のものとなれば、冬が旬というものがザクザクある。シャケ、ブリ、フグ、カニ、カキなど。どれも年末商材の目玉商品であり、ビールのCMで当て馬として使われる定番食材でもある。今回はフグを取り上げたい。
ブログで取り上げる訳だから、慶も当然フグは大好物である。特にフグ刺は最高だ。あの小さいネギにクルクルと巻いて、もみじおろしを入れたポン酢で食べた時のほのかなコリコリ感と、フグ特有のえぐみのないうま味は卒倒しそうなぐらいに繊細で最高である。あまたある日本の食文化で、このフグ刺は最も高度に洗練された料理の一つである。
フグがなぜに洗練された食文化の一つかと言えば、まずフグに高い金を払って食べているのは日本人しかいない。世界中どこに行っても、フグは有毒生物であり、原則食用禁止なのである。フグを食べるというのは、自殺行為と同じなのである。だから日本人がバカみたいに高い金を払ってフグを食っているのを見聞きすると、外人から白い目で見られる。もちろん、日本人だって過去に数え切れないぐらいの人がフグで命を落としているし、何度も食用禁止令が出されている。それでも、フグ食を辞めないというのは、ひとえにフグがうまいからである。
「フグはうまい、しかし命は落としたくない」。この長年の葛藤から解を導き出したことで、現在のフグ食文化が花開いていると言える。まずフグの持つ毒の正体解明。これは日本人が最初に見いだし、テトロドトキシンと命名されている。青酸カリの850倍というとんでもない毒である。それもフグにはどっさり含まれている。食って10分もせずにしびれ始め、呼吸停止で即死。とにかく症状の進行が早く、しかも全身しびれているので安楽死だ。もうこの話を聞いた段階で食用しようという人は普通出てこない。フグはこの毒を持っていることで、他の生物に襲われることはないのだという。恐るべきフグ毒。
しかしよくよく調べると、フグの種類や、体の場所によって毒があったり無かったりする。それならば、その普遍性を証明して、毒のない部分だけを食べれば、命を落とさずにおいしいフグを食べることができるのではないか?そういう視点で長年の調査研究が取り組まれてきた。現在はフグの種類ごとに有毒部位と無毒部位が科学的に解明され、「ふぐ調理師」という難しい試験をパスした調理人だけが、フグを調理してお客に出すことが許されている。このシステムであれば、有毒なものでも安全に提供することができる。科学的根拠もハッキリしている。実に素晴らしいではないか。日本人の諦めない気持ちが凝縮されている。
またフグの身は繊維質で固いので、薄造りが基本だ。フグを滅多に食べることができない人は、「高いからケチっている」と馬鹿にするが、普通の刺身サイズにカットされたフグなどゴムと一緒で噛むことなどできない。あの薄さで無いとだめなのである。また新鮮なほど透明感も増すので、お皿が透けて見える。そうすると、このお皿のデザインも重要だし、花びらのように並べて立体感を出す技術も発達する。たかがフグの身を薄く切って生で食べるだけのことなのに、毒性学、調理学、デザインなどすべての最高技術が投入されている訳だ。まさに他の追随を許さない、日本の高度な食分化の到達点である。
岸壁釣りで餌取りとして釣られるクサフグは猛毒フグの代表だが、食用禁止と思ったら間違いで、何と食用フグのひとつに入っている。筋肉のみ食べるコトができる。実は慶もふぐ調理師免許を持った人の手さばきにより、1度だけこのクサフグの刺身を食べたことがある。絶品である。トラフグよりも透明感が強く、かつ弾力も強い。しびれ始めたら救急車を呼ぼうと思ったが、何とも無かった。
Toxic_puffer

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