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2011年12月24日 (土)

ミカンざくざく

年末になると商品を売る側も買う側もご入り用なので、町にいろんな商品が多量に供給される。そうすると、もらい物のお裾分けという形で、いろんなものがタダで頂けるようになる。その中で、もう足りているからいいですよという代表格は「みかん(温州ミカン)」だ。関東以北でみかんは廉価品ではないが、西日本だとミカンは完全に廉価品である。スーパーだとMサイズ10個ぐらいで298~398円、ディスカウントだとその-100円で売られている。さらに、年末時期の直売所となると、袋入りが100~200円、箱買い(5kg)でも980~2500円と格安になっている。10個で100円は、1個が10円である。駄菓子屋で10円のお菓子を探すのが難しい時代に、こんなに安く賞味できる国産スィーツはもう出てこないだろう。
ミカンは日本の冬を代表する果物だ。コタツの上にミカンが乗せてあるのが普通の庶民宅の光景であろう。野菜も果物も初夏から秋に一斉に出てくるが、秋から冬に出てくるものはそう多くない。しかも冷蔵保存しなくても一定の保存性があり、手で剥いてそのまま食べることができる果物はバナナとミカン以外に存在しない。また栄養価から言えば、ビタミンAに類似したベータクリプトキサンチン、ビタミンC、食物繊維のペクチン、クエン酸、カリウムなど、健康的に申し分ない成分ばかりである。生野菜が減る冬場のビタミンと食物繊維の補給源として、ミカンは大変有用な食物である。
Unshumikan
慶が子供の頃は、ミカンはだいたい種が含まれていた。その数と比率がだんだんと減って行き、今や種を含んだミカンを見つけ出すことが難しいほど種なし果物になっている。種があるのとないのとは天と地ほどの違いである。また、糖度も明らかに上がっている。昔はミカンの当たり外れが大きかった。酸味が強いものは、腐る一歩手前まで待たないと甘くならない。見た目では分からないしハズレを買わされると食べる度に不幸な気分になるから、ミカンの販売コーナーには、試食用のミカンが置いてあったものだ。今でも試食コーナーは時々見るが、出荷段階で糖度センサーで選別をかけているので、品質は一定している。酸味の強いもの、痛みのひどいものはジュースになるようだ。また、内皮の厚み、白スジの量も明らかに減っている。昔は1房ずつ丁寧に皮を取り除いたり、中身を吸い尽くして内皮を捨てていたが、今はそのまま食べても気にならない。現代ミカンは極限まで種なし、均一、甘く、皮が薄くできていて、実に食べ易いものだ。この進化は徐々に進んだので、いま急に昔のミカンを食べると、消費者は間違いなくクレームをつけてくるだろう。
しかし、廉価品の大量供給の結果として、ミカンはどうしても余ってしまう。日持ちが良いとは言え、持って1週間から10日で、だんだんシワシワになってきたり、床ずれで腐ったりカビが生えたりして廃棄されることも多い。まあ元々が安いから気にする必要はないのだが、貧乏性の日本人的には、10個のうち1個でも腐って廃棄すると損をした気がする。そうすると、腐る一歩手前のものはジュースという道もあるのだが、これが皮ごとすり潰すと濁って食味が落ちる。プロがやるように果汁だけをクリアに絞り出すには、ミキサーを使ってはいけないのである。このあたり、圧搾で残渣をうまく除去できる家庭用のジュース製作装置があると良いのだが。
ジュース以外の食べ方としては、冷凍ミカンがオーソドックスだ。特に夏場に売られていないミカンを、冷凍品で食べるのはありがたい。夏のキオスクを覗くと、3個ぐらい冷凍のミカンが売られてあったりして良い。冷凍ミカンは学校給食の定番でもあった。溶けかかってシャーベット状になったミカンは、甘みが強く、適度な酸味は夏場の疲れも癒やしてくれる。欲張って食べると虫歯はしみるし、頭がツーンと痛くなる。懐かしい感じだ。アイスコーナーから冷凍ミカンが姿を消してしまっているが、1個10円のものが50円で売られても構わないから、今一度冷凍ミカンの復活を望んで止まない一人である。今の平成生まれで冷凍ミカンに馴染みのない若者に食習慣をつけるためにも、夏場にコンビニで冷凍ミカンを売ってほしいものだ。
時々産地に行くと、冷凍ミカンを焼いて食べることを推奨する生産者がいる。これを実際に家庭用のオーブンや魚焼きでやってみると、実にまずい。焦げと外皮から移った苦みが食味を悪くしてしまう。甘みが増える以上に苦みが増えるのでダメだ。やるなら外皮を取り除いて、アルミで覆って焼かないと無理だろう。そんなややこしいことをするぐらいなら、そのまま食べてしまった方が楽だ。結局ミカンの食べ方は、生食かジュース以外にはあまり思いつかない。
あちこちでブランド化されているミカンだが、基本は中国原産のものを国内で品種改良したものばかりだ。中国に日本で見られるような大粒のみかんはない。もし興味があれば中国からの渡来地を一度訪れて欲しい。渡来地は鹿児島県の長島ということになっている。ここは八代海の南に位置した半島状の島で、ブリの養殖が盛んなところだ。ここにマンダリンセンターという、ミカン渡来地を堂々宣言するにふさわしい博物館がある。日本人でこの八代海の片田舎がみかんの渡来地だと言える人はほとんど居ないと思うが、外国で温州みかんは「サツママンダリン」と呼ばれ、立派に鹿児島原産のミカンということになっている。このマンダリンセンターの敷地内に、原木から接ぎ木された小ミカンが茂っている。いま世間に出回っているミカンとは比較にならない小さなもので、500年にも及ぶ品種改良の結果が今に至っていると思うと感慨深い。たかだかミカンの原種を確認するために、地の果てに近い長島まで足を運ぶのはかなり大変ではあるが、これだけ日本人がお世話になっているミカンだから、死ぬまでに一度は足を運んでみてもらいたいものだ。

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